《ロマン的魂と夢vol.3〜世紀転換期の色——モーブと同性愛》(2019.14.14)

 

美しい冬の一日、小部屋の菫色/Mauveに包まれながら開催された第3回目となる本サロン。ご好評を頂き、無事終了致しました。

「モーブ Mauve」という色彩を手がかりに、まだ語られていない歴史の横道へも分け入りながら、19世紀末から20世紀初頭の世紀転換期に生きた魅惑の人物とそのスタイルを探ってゆきました

第一部《科学とモード》では、合成染料モーヴの解説から、不透明水彩の流行と写真の発明によって変容した色彩感覚へ。自然物を人工の色「モーブ Mauve」で表現したプルーストからスワン夫人が愛したモーブ色を経て、リアーヌ・ド・プージィなどドゥミ=モンド(高等娼婦)のファッションへ——ジェームズ・ティソやジャン・ベローなど風俗画家の作品からは、当時の最先端モードを読み解きました。

次々映し出される膨大な資料は、長澤さまの鮮やかな切り口により、歴史の一頁から色彩豊かに生き生きと、当時の空気を伝える様に立ち上がってきます。

菫色/Mauveの壁面に飾られたルネ・ヴィヴィアンとナタリー・バーネイの肖像

そして、第二部《モーブと同性愛》へ。ロベール・ド・モンテスキュー、オスカー・ワイルド、ナタリー・バーネイ、ルネ・ヴィヴィアン——耽美で頽廃的な系譜の登場に、小部屋の菫色/Mauveが陰影をより深くしたように感じました。

トークショーの後は、毎回大好評の長澤さまの貴重なモード誌のコレクションを閲覧。『Art Goût Beauté』はじめ、ガラスケース越しではない、歴史的資料の息遣いを直に感じる実り多きひととき。

霧とリボンからは、ヴィタ・サックヴィル=ウェストやルネ・ヴィヴィアン、オスカー・ワイルドに関する参考図書やDVDなどを。

大いなるモーブ色の時間旅行を終えて、ティタイムへ。

エレガントに歴史を紐解き、ご講義下さった長澤さまと、モーブ色の時間旅行にご搭乗下さった連盟員の皆様に心より御礼申し上げます。

さまざまなスタイル(モードと流行文化)について、映像やグラフィカルな資料をもとに考察していきたいと思っています。キーワードは「ディレッタンティズム」です。ディレッタント=好事家からの視点で過去のスタイルを見てゆく。歴史を辿るというよりも、その当時の気分に浸るということかもしれません。クラブ名を「ロマン的魂と夢」としたこともそれ故です。

時代的にはモードの始まりである中世を起点に、ロココや1830年代のロマン派を挟んで、1970年代のノスタルジック趣味への回帰あたりまで。でも、モードの変遷史ではありません。その流行を生んだ文化そのものに切り込んでいきます。上流の風俗から陋巷の徒まで。すべての先端が対象です。

「ディレッタンティズム」とは、もの好きの役に立たない趣味の謂いでもあります。役には立たねど、知識と視覚の素晴らしい愉悦がある。それが「ロマン的魂と夢」の名で展開してゆく当クラブの本質です。

グラフィック・デザインを中心に書籍や雑誌の企画・編集・執筆・制作までを手がけるpapier colléを主宰、最新刊『20世紀初頭のロマンティック・ファッション』はじめ比類なきファッション史の著作でも知られる長澤 均主催のクラブは、スタイル(モードと流行文化)をめぐるトークショー&サロン。

豊富なヴィジュアル資料を入り口に、博覧強記とエレガントな語り口で、私たちを特別な時間旅行へと誘います。

「サロン」とは歴史的にみても「スペクタクル空間」であったのでは?と思っています。知識のスペクタクル、会話のスペクタクル、当意即妙のスペクタクル。

そのサロン的空間で、テーマとする時代の原資料を持ち寄り、写真資料と独自に編集した映像で、知と視覚のスペクタクルを体験していただければと思っています。

たとえばアール・デコをテーマにするなら、当時作られた香水瓶や雑誌などの実物をご覧いただき、写真資料だけでなく立体的に体感できるようにします。スタイル(様式)にまつわる内容が中心ですが、それはどれも膨大な資料を用いて「美の本質」に迫っていく「エステティカ(美学)」のサロンとなるはずです。

長澤 均|Hitoshi Nagasawa

グラフィック・デザイナー/ファッション史家

装幀、CDジャケット、展覧会などのグラフィック・デザインのかたわらモード史を中心に多くの著作を刊行。『流行服~洒落者たちの栄光と没落の700年』、『BIBA スウィンギン・ロンドン1965~1974』など、誰も書かなかった視点によるものが多い。オンライン古書店モンド・モダーンも運営している。また、モード雑誌は1910年代からの『Gazette du bon ton』の完本、1920年代からの『Vogue』、『Harper's Bazaar』を多数コレクションしている。

papier collé

mondo modern

Twitter|@mondo_modern

★終了致しました。ありがとうございました。

《ロマン的魂と夢vol.3〜世紀転換期の色——モーブと同性愛》

開催日|2019年12月14日(土)

イベントの内容

第三回目となる本サロンは、長澤 均の著作『流行服』でも取り上げられている「モーブ Mauve」という色彩を手がかりに、豊富な資料をご覧頂きながら、世紀転換期に生きた魅惑の人物とそのスタイルを探っていきます。

1856年に開発された合成染料「モーブ mauve」は、世紀末の美術、文学、ファッションまで、さまざまな世界に刻印を残し、さながら世紀末の心象風景を象徴するかのようになっていきます。

マルセル・プルーストは、その小説のなかで幾度もモーヴ色の衣服について語り、オスカー・ワイルドらの芸術至上主義らの世紀末を「モーヴの時代」と形容するようにもなります。

変わって20世紀初頭。パリのレスボス界の中心にいたナタレー・バーネイは、さまざま女性と浮き名を流します。高等娼婦リアーヌ・ド・プージィ、詩人ルネ・ヴィヴィアン。ルネは『菫色の花の片隅で』という詩集を残しました。

古代ギリシャの女流詩人、サッポーが同性の恋人と菫の花輪を被って以来、菫色~紫色は同性愛を象徴する色でもあり続けてきました。

そしてレズビアニズムは男装を生み、ファッションの世界をも変えていきます。

世紀末から狂乱の20年代まで、モーヴに耽溺した人たちとスタイルと探っていきます。題して「世紀転換期の色」。

当日は、当サロンにこれまでお持ちしていない稀少な雑誌などを持参しますので、そちらもご覧いただけます。

長澤 均の著作『美女ジャケの誘惑』『20世紀初頭のロマンティック・ファッション』『papier collé vol.3』を展示販売するほか、霧とリボン主宰ミストレス・ノールがプライベート出版したルネ・ヴィヴィアンをテーマにしたアートブック『菫色の文法〜ルネ・ヴィヴィアンの寢臺』もご覧頂けます。

開催日|2019年12月14日(土)

15:00~18:30(開場14:45)

 

会場|霧とリボン 直営SHOP “Private Cabinet”

 

定員7名様・先着予約制 *残席1席のみ

*定員に達し次第、受付終了とさせて頂きます

 

会費

【事前予約】

税込3,000円(〜12/9受付締切・最終お振込期限12/10)

【当日入場枠】*12/9までに定員に達しない場合のみ募集

税込3,500円(12/11〜12/9受付の会費当日払い)

*デザート付き

*素敵なレジュメ付き

*別途ワンドリンク(500円~)をご注文下さい

 

お申し込み方法|

★ご参加には「菫色連盟」へのご入会(入会金:1,000円)が必要となります。お申し込み前に、ご入会方法利用規約をご一読願います。

以下の【1】〜【9】の内容をご明記頂き、菫色連盟HP内CONTACTよりお申し込み頂ければ、「菫色連盟へのご入会」と「サロンイベントへのお申し込み」が同時に行えます。

 

★既に連盟員の方は、【会員番号】と【お名前(ご本名)】をご明記の上、【8】【9】のみお知らせ下さい。

 

★お申し込み内容に不備がある場合、ご予約が正確にお取りできない場合がありますので、ご確認の上、お申し込み願います。

 

【1】お名前(ご本名・よみがな)

【2】筆名/ハンドルネーム(ご本名以外でご活動を希望される場合、ご明記願います)

【3】郵便番号

【4】ご住所

【5】お電話番号

【6】生年月日(西暦 年 月 日)

【7】すぐにご連絡のつくメールアドレス

【8】ご参加希望のサロン|ロマン的魂と夢

【9】ご参加人数|2名以上の場合は、ご同伴者様のお名前をご明記願います。ご同伴者様も菫色連盟へのご入会が必須です。(会費のお支払いは代表者さまによる一括振込みとさせて頂きます)

二日以内に折返しメールにて詳細をご返信致します。

メールが届かない場合は送信エラーが考えられますので、当方からのメールが迷惑メールフォルダに振り分けられていないかご確認の上、再度お申し込み願います。または、以下までメール願います。

infoatkiri-to-ribbon.com

 

重要なお知らせ|

・会費のお振込を持ってご予約完了とさせて頂きます(事前ご予約のみ)。

・期日までにお振込がない場合はキャンセルとさせて頂きます(事前ご予約のみ)

・少人数制のサロンとなりますため、ご入金後のキャンセルに関しては、ご返金は致しませんのでご了承願います。

・事前予約は12/9(最終お振込期限12/10)までとなります。

・事前予約の場合のみ、ご入金前のキャンセルについては、キャンセル料はかかりません。

・開催三日前までに定員に達しない場合は、12/11よりプラス料金(500円)で当日入場枠(会費当日払い)を募集致します。本イベントの当日料金は3,500円となります。

・当日入場枠のキャンセルについて:お菓子や配布物、ワークショップの場合は材料の準備がございますため、恐れ入りますが、事前ご予約と同額の会費(本イベントは3,000円)をキャンセル料として頂戴致します。お支払いの詳細はイベント終了後、ご連絡致します。

 

内容を十分にご高覧の上、お申込み願います。

皆様のご参加をお待ちしております。

『20世紀初頭のロマンティック・ファッション』刊行記念トークショー

《ロマン的魂と夢vol.1〜ふたつの黄昏》(2019.5.18)

菫色をより濃く深くする黄昏時間——美への歓声とため息に満ちたサロンイベント、ご好評を頂き無事終了致しました。

ガス灯以降の時間感覚——「黄昏どき」が単なる日の沈む時間から、ロマンティックな意味を持つようになった。多彩なスライド資料を駆使して展開する長澤さまの魅惑の読み解きに、沈黙していた絵画たちからロマンティックな会話が聞こえてくるかのようです。

アブサン色と菫色がふたつの黄昏のよう——メリリル様特製、可憐なアイシングクッキーがティタイムを飾ります。長澤さま自ら作曲・演奏、編集した映像作品にご歓談の賑わい重なる楽しきサロンの風景。

黄昏どきに「パリの宵」が重なって——ブルジョワ社の香水「SOIR DE PARIS」やパウダーはじめ、アール・デコ時代のコンパクトや漆黒のバカラ製香水壜まで! 今回も長澤さまの貴重なコレクションがお披露目されました。

『ガゼット・デュ・ボン・トン』はじめ高級モード誌の息遣いを肌で感じながら鑑賞する至福のひとときにあちこちで歓声が。貴重なコレクションを惜しみなくご提供下さる長澤さま。美への無償の愛に胸がいっぱいになりました。 

「ふたつの黄昏」とは、頽廃的なアール・ヌーボーの黄昏とロマンティックなアール・デコの黄昏。それは同時に、美と知の黄昏でもありました。ディレッタンティズムのビジュー長澤さまに、心からの感謝と敬意を込めて——